そしてようやく、「ハンガリーの湯」。
ケストヘイの隣町、Heviz (ヘビス)にある欧州最大の温泉湖がこのたびの旅の目的なのだ。
幸い、雨も上がった。
こういう施設では手順が分からず、おろおろするものだ。
複数の言語で書かれた看板を読み、係員にあれこれ聞いた結果、ここでは3時間が最低で、手首の輪っかがロッカーの鍵代わりになることが判明。
更衣室は当然、男女別になっているが、個室ではなく、懐かしい学校の更衣室そのものだ。
水着に着替えて外に出る(すっぽんぽんではいけません)。
さすがに欧州最大。
実際の広さは「百聞は一見にしかず」なのだが、調べたところ、4万7500平方メートルだそうだ。
現地では「深いので注意」としか書かれていなかった水深は、最大約38メートルもあるという。
私は黒い浮き輪を借りて湯に浸かった。
この日の水温は31度。
生ぬるい感じだ。
真冬でも25度をくだらないとかで、端っこのほうにはショッキング・ピンクや真紫の(つまりかなりどぎつい色の)睡蓮が咲いていた。
湯に浸かっている人々の年齢層は高い。
聞こえてくる言葉や見た目から察するに、近所のオーストリアやドイツからのお客さんが多い様子だった。
欧州では高齢層も巨体も海ではビキニと相場が決まっているが、さすがにここではワンピースが多かった(ちなみに私はタンキーニ)。
湖の真ん中にパビリオンがあり、入ってみたら、その中には仕切りの向こうに水温がもっと高い湯が二種類。
室内であるのが何だが、水深はそのまま。
ますます気持ちよかった。
仕切りのひとつで、人々が並んで号令に従って、ゆっくりと動いている部分があったが、それがいったい何であったかは判明できずじまいだったが。
パビリオンの奥では、マッサージやトリートメントなどいろいろなサービスが提供されている。
せっかくだから、と何かやってもらうことにした。
ここの難点は、クレジットカードが使えないこと。
手持ちのキャッシュをはたいて、私はチョコレート・トリートメントというのを受けてみた。
お姉さんが、色は白っぽいが本当にチョコレートの香りがするスクラブで、身体中を揉んでくれた。
私の苦手なぐりぐりするマッサージと違って柔らかく、気持ちよくなって眠りそうになったほど。
効果のほどは定かではないが、足の裏の皮膚などの乾いた部分がそれからしばらく潤っていたような気がする。
120%満足し、いい気分で湖をあとにした。
その日の夕食はこのたびの旅の最後の晩餐。
ケストヘイのコシュート通りのパブ風レストランで、ハンガリー名物のグーラーシュ・スープ(←)と、ちょっと甘めのロールキャベツを食べた。
最後までなんだが、ここのトイレも「顧客は無料で使ってよろしいが、トイレだけに入るヒトは支払うように」と箱が置いてあった。